アーティスト・サミット京都 day15 〜サミット〜

2009.12.20.

・アーティスト・サミット京都2009 テーマ「未来への跳躍」について


この「青い影」は、サミット議長でもある宮島達男さんによる PEACE SHADOW PROJECT 。核兵器反対署名を、影でおこなうものです。なぜ影かというと、広島に原爆が落とされた瞬間、壁にその人影だけを焼き残して亡くなった犠牲者への追悼の意からです。

アーティスト・サミット京都の主催は京都市ですので、京都市長が開会宣言をしてくださいました。

市長の羽織裏のお洒落を珍しく眺めるハーヴィ。その左は、学長の千住博さん。右は議長の宮島達男さん。


午前中は、6人のアーティストによるプレゼンです。世界の諸問題への解決方法を、アーティストの目線から提案します。以下、私の話したことが少しでも伝わればと、ノートから抜粋します。


12/20
MEMO

(1)メディアの話。

私 と あなた の間 

その間をつなぐのが、メディア/メディウム

この「間」が物理的に100km、あるいは10000km離れている場合

そこを繋ぐのは電話であったり、インターネットであったり、
あるいはテレビや新聞であったり。

テレビや新聞は、表面的な情報

匂いで、もっとよりリアリティのある、実感を伴うような、空間的な伝え方ができないか?
例えば戦場の、肉の焼ける匂い。
歯医者さんで神経を焼いた時に嗅いだ生臭いニオイに似てるに違いない。

地球の向こう側の人へ想いを馳せることができるかどうかが鍵。

→「匂いの持つパワー」をいろんな形で探ってみたのが今回のAIR

*猿は、味わう、嗅ぐ、触るなどの感覚以外はうさんくさいと思っている



(2)スーダン「ダルフール問題」

ここからは、匂いや嗅覚から切り離して、上田麻希個人として注目したことと「提案」

今回のAIRでやった「香道で香りを聞いて世界旅行」プロジェクトのために集めた匂いの中に、スーダン産の乳香があったことから興味を持った「ダルフール問題」

[スーダン産原油とダルフール情勢]
*1 barrel = 42 US gallons = 158.76 litres.


http://darfur-tribune.seesaa.net/article/117724681.html?1256619853

スーダン政府の60パーセントの収入が石油による。
そして、国家予算の80パーセントが軍事費に使われる。


http://www.eia.doe.gov/cabs/Sudan/Oil.html
スーダン原油総輸出量
380,000 barrel per day = 60,329,000 liter per day (約6千万リットル)


スーダンは2006年に日本に対して、1日あたり124,000バレル原油輸出を出荷した。 
124,000 barrel = 19,691,200 liter
19,691,200 liter per day (約2千万リットル)


→スーダンが1日に輸出する量において、約30パーセントを日本が輸入したことになる。


スーダンが2006年1年間に日本に輸出した量
= 7,187,288,000 liter per year (約72億リットル)

国内の電力会社では関西電力(大阪市)が使用量1位。
= 700,000,000 liter per year (約7億リットル)

日本が輸入した量の10分の1を関西電力が使ったことになる。

つまり、

スーダン総輸出量の3%を関西電力が使ったことになる。

スーダン情勢の少なくとも3%の責任を、関西電力が負っている。


環境省統計 使用電力量(百万キロワット) 平成19年度 によると、

関西電力供給エリアの電力使用量:
大阪府 20,893
京都府 6,475
兵庫県 13,107
奈良県 3,306
滋賀県 3,349
和歌山県 2,714
三重県 4,335
岐阜県 4,743
---
合計 58,922

京都府使用量は、全体の約11%を占める。



http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%83%AB%E3%83%95%E3%83%BC%E3%83%AB%E7%B4%9B%E4%BA%89
この紛争で2003年2月の衝突以降、2006年2月時点での概算で18万人が既に殺害された。

→ 年間平均6万人が殺害されている。

(難民はこの何十倍も発生)



関西電力によって供給された電力により、2006年の1年間に、1,800人の非アラブ系スーダン人が殺害されたことになる。
(60,000人の3% = 1,800人)


京都府で使用された電力により、2006年の1年間に、198人の非アラブ系スーダン人が殺害された計算となる。
(1800人の11%)




日本は 依然として輸入中。26 % (2008) 。中国は55%
http://www.eia.doe.gov/cabs/Sudan/Oil.html

中国製品ばかり買ってる日本人は、間接的にもかなりこのジェノサイドに加担していることになる

関電に電話質問。(答)現在はスーダン産原油は10%以下。今では、マレーシア産、インドネシア産が主流。

これに付け加え、携帯電話などに使われるレア・メタルがコンゴ東部の紛争を引き起こしている事実。
(レア・メタルは半田に使われる。世界の50%をコンゴが産出)

この現実世界で清く正しく生きるのは、なんと難しい事だろう。





(3)解決策の提案:カネ、モノ、ヒト、情報の完全自由化

ダライ・ラマ
「世界平和のために」より (1999)

「もし宇宙からこの世界を見下ろしたら、国境線など見えません。ただ一つの小さな惑星が見えるだけです。ところが砂に一本の線を引いたとたんに、私たちの頭には「こちら」と「あちら」の感覚が生まれます。この感覚が育っていくと、本当の姿が見えにくくなります。アフリカの多くの国や、最近では旧ユーゴスラビアなど東欧の一部の国で、そうした視野の狭い国粋主義が大きく広がっています。

しかし、いまでは「こちら」と「あちら」の概念は意味をなくしつつあります。隣人の利益は自分たちの利益でもあるからです。隣人の利益を大事にすることは、基本的に自分たちの将来を大事にすることになります。今日の現実は単純です。敵に害をなせば、自分にも害が及びます。これは、現代のテクノロジーの進歩とグローバル経済を考えればわかることです。」


世界はつながっている。
隔離して住むこと(後戻り)できない。
宇宙から地球を見ると、境界はない。
EUをもっと地球規模に広げるにはどうしたらいい?

idea 1) お金の情報化
お金は自由化している。
どんな通貨でも、ほとんど両替できる。
同時にお金は、価値を数字で置き換えてしまう = 抽象的
定食屋さんで、皿洗いしたら、その日の定食はマケてくれる というような、具体的な価値の交換が無い。

お金のpost-it
carbon-footprint のように、記録をデータとして残せないか
1本100円の水
この100円はどのように何処に、誰に、流れていくのか?

個人情報を開示して、お金を使うことに対して社会的責任を持てるようにする
Aさんはいいお金の使い方をしている → 社会的信用が高まる。(社会が監視する)
税務署が会社の金の使途を監視するように、グローバルに金の流れを監視する国連のような機関が必要

idea 2) ヒトの自由化
global passport の発行(EUをずっとずっと世界中に広げるイメージ)
ヒトが自由化してるとは言えない。
*私自身の移住体験
*ルワンダ難民の友達:命からがらオランダへ。オランダで難民申請。1年間、難民を収容する刑務所のような所に入る。100人に一人許可される難関に通った。
*現行の国家法だと、たまたま生まれついた国に住んで生きていくことを半ば強制される。→ どこにでも住んでいいとしたら? 日本にたくさんの人が流れてくる? 日本人は外に行き、東南アジア人やアフリカ系黒人だらけの国になったりして。 → 日本という概念が消える? それとも逆に強調される? 国が会社みたいになって、魅力の無い国はいっしょうけんめい広告を出さなければいけなくなっちゃうかもしれない。
想像してみよう。


世界の問題の解決は、アーティストだけではできない。
アーティストの得意技は、想像力と斬新な発想。
科学者、政治家、宗教家などと一体になって取り組むべき命題。
次のサミットに期待する。




京都府で使用された電力により、2006年の1年間に、198人の非アラブ系スーダン人が殺害された計算となる。」

美術の現場ではあまり一般的ではないややアカデミックなアプローチですが、この数字は会場の人たちに大きなショックを与えたようです。

この場で話されている「世界規模の問題」とはいったいどいったものであるのか。実際に数字に出してみました。スイッチを入れて灯す明かりが、知らないうちに、地球の向こう側の人を殺している。そんな時代に、わたしたちは生きているのです。いくら正しく清く生きようとしても、難しい時代です。

この数字を計算して出した夜は、その生々しさに私も夜なかなか寝付けませんでした。お客さんにもそれがよく伝わったようです。

午後は浅田彰さんのモデレートによるパネル・ディスカッション。テーマは、アーティスト・サミット京都の未来、あるいは、京都ビエンナーレの是非についてです。




和太鼓の演奏で、クロージング・パーティが始まりました。


ディナーは、この学校の精進料理教室(そんなものがあるのですね!素晴らしい)の先生による精進料理です。



精進料理は、私がいちばん好きなタイプの料理(普段が玄米菜食のベーガンなのでね)なのに、あまりに人と話すのに忙しく、ほとんど食べ逃してしまいました・・・残念・・・主賓になるということは、こういうことなんですね 笑。

人参、紅芋の裏ごしに甘い蜜をかけたデザートは、しっかりいただきました。



その後、場所移動。
打ち上げです。
カラオケセットのない部屋なのに、カラオケが始まりました。








最後に、私のプロジェクトをいろいろな面でサポートしてくれた私のチーム(中田先生、ナッちゃん、ナッティ、あいちゃん)にLOVEを送ります! どうもありがとう!

(余談)
この宴会の後はさすがに疲れ果て、3次会はパス。オランダ人のマリエットと共にみんなに別れを告げたあと、帰り道の途中、銭湯に寄りました。とても昭和度が高く、マリエットもなかなかディープな日本体験ができたようで。その後、温泉とか銭湯に病み付きになったという話・・・ふふふ。いいでしょう、こういう日本。

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