2009/11/02

においのアートを始めたきっかけ

アートといえばふつうは目で見て、耳で聴いて楽しむものですが、私の作るものは鼻で楽しむものです。匂いを素材として扱い、嗅覚のためのアート作品を作っています。

匂いはふつう、香水やフレーバー、アロマテラピーなど、いろいろな形で身の回りに存在します。わたしが探っているのは、こういった実用の範疇を超えたところに、どんな可能性があるのかという点です。たとえば匂いにより引き起こされるイマジネーションや感情、そして嗅覚が新たに切り開く知覚体験など、まだまだ未知の世界がそこに眠っているのではないかと思うのです。

ちょうど美術館に絵を展示するかのように、匂いを作品として展示しています。まさにひとつひとつの展示が実験そのものです。インスタレーションやライブ・パフォーマンスという形をとることもありますが、ワークショップという形で体験を共有する方法をとることもあります。こうして嗅覚に真っ正面から取り組む作家は、世界にも数人しかいないのではないかと思われます。

匂いのアートを始めたきっかけを話すと、長いです。幼少のころから趣味でポプリの調合をやっていたほどなので、嗅覚は敏感な方でした。高校時代のアメリカ留学先では、言葉の通じないフラストレーションから本格的に絵を描き始め、はじめてアートというものをリアルに感じ始めました。かといってすんなり美大に進んだわけでもなく、大学では五感の知覚や情報学に関する総合的な勉強をしました。同じく大学院ではメディア・アートの先生につき、卒業後はメディア・アーティストとしてオランダで活動を始めました。オランダへはいつのまにか流れ着いてしまった、という表現がしっくりきます。前出の先生がオランダのメディア・アート・フェスティバルでよく展示していた関係で、伝手があったことも要因ではありますが、やはりその延長線上で今のパートナー(オランダ人)と出会ったことが決定的な後押しでした。

ヨーロッパの中でもわりとオープンなオランダのアート・シーンも、土壌としては魅力でした。無名駆け出しの頃、「地球の裏側同士をインターネットで繋ぐ、地球の穴のようなものを作品として作りたい」とあるアート団体の方と何気なく話していたら、「それはおもしろい、やってみようよ!」と乗ってきて、どんどんプロジェクトが発展していくという始末。最終的にはロッテルダム市とオランダ大使館も巻き込み、ロッテルダムとインドネシア・バンドゥン市の広場に常設展示という形で実現してしまったのです。 (“Hole in the Earth” , 2003)

その後出産し、ふつうのお母さん並みに家事・育児に追われ、それまでのように仕事もできなくなり、焦りました。そこで思いました。この状況を逆手に取って、家でしかできない小さな実験的なことを始めよう、と。嗅覚への重要性を妊娠・出産を経て再認識したこと、メディア・アートの経験から匂いをメディウムとして認識し始めたこと、身近に匂いの抽出方法の手ほどきをしてくれる友人がいたこと、手近なアトリエとしてそこに自宅のキッチンがあったことなど、いろんな条件が重なって生まれたのが、私の今の仕事です。

今年は「日本 – オランダ年」の一環で、ライデン市立美術館にて大きな展示をしました。400年前のオランダと日本の、双方の視点と印象を、匂いで表現した展示です。インターネットに匂いは載りませんが、こちらのHPで印象だけでも嗅ぎ取っていただければ。http://www.ueda.nl



上田麻希
東京生まれ。匂いを素材としてアート作品を制作する、世にも珍しい「匂いのアーティスト」。1997年慶応義塾大学環境情報学部卒、1999年同大学院政策メディア研究科修士課程修了。2000年文化庁派遣若手芸術家在外研修員(オランダ)。2007年ポーラ美術振興財団派遣在外研修員(オランダ)。2007年グラース・調香師学校のサマー講習終了(フランス)。現在ロッテルダム在住。ヨーロッパのみならず、トルコ・カナダ・日本など世界中で精力的に展示している。

アーティスト・ブログhttp://blog.ueda.nl

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オランダ日通 くらしの手帳 2009年9月号掲載

2009/10/30

FoAM BAZAAR と Scents of Hollandの展示

Scents of Holland
@FoAM BAZAAR







実は息子を同行せざるを得なかったので、夜のパーティを楽しむことはほとんど叶わず、唇を噛む思い。けれども、じつにインスピレーションとファンタジーに満ちた展示でした。一晩だけなんてもったいないと思われるほど。

展示の大枠テーマは「plants and vegetation」。日本語にすると、植物と園芸。簡単にいうと、人と植物の関係を新たな視点から探り直すもの。

下のTheunが展示したのは、アムステルダムの町中で見つけた草花から作ったジュース、ジャムなど。



下のは、植物が発するデジタル情報が映像データを乱すことで、アブストラクトな映像を作る、といった実験。




下のは TALES OF TALES の作品。
まるでナウシカの世界のようなゲーム空間。


こちら、折り紙コーナー。私が同行した息子のために特別に作りました。


Lina Kusaite のイラストレーション。まさにナウシカの「ふかい」を思い起こさせる。あのファンタジーにどっぷり漬かった世代にはたまらないイラストレーション。


彼女のインスピレーション源は、植物の観察と研究にある。





彼女の植物コレクションの数々・・・まるで生物の臓器のような形態をしている。



彼女のイラストレーションの世界観と、匂いとを組み合わせて、一緒に何かしてみようか・・・というコラボレーション案が出て来た。楽しみだ。私としては、誰かとコラボレーションしたいと自発的に思うのは珍しいのだが。

こういうインスピレーティブな磁場というのは、作ろうと意図してもなかなか作れるものではない。オーガナイズする人たちのエネルギーとかバイブレーションによって、偶然的かつ必然的に生まれるものだと思う。

その基本は、何と言っても「食」だと思う。人間ががそこからエネルギーをいただくわけだから、おろそかにはできない。お腹を満たしてくれると、誰でも小さなシアワセを感じるのだから、人間はわりと単純な生き物。それをFoAMは良く知っている。だから、人が喜んで寄ってくる。

FoAMのイベントでは、ある夫婦がいつもケータリングをしてくれる。旦那さんの方が、いろいろなハーブを漬けたリキュールでカクテルを作ってくれた。

2009/10/28

Scents of Holland もバージョン・アップ

10月中旬で仕事が落ち着いたと思ったら・・・

まったくしてません!

ずっと仲良くしてるブリュッセルのFoAMから、あるイベントへの作品出品依頼を受けたのがつい先日。FoAMの中心人物がずっと病気だったので、なんとかサポートしてあげたいという気持から、日も迫ってるのについ"Yes"と言ってしまいました。(子供連れで行くことになるから大変。)

しかし。あいかわらずサイト・スペシフィックなプロジェクトが多い私には、ポンッ!と展示できるような作品のストックがない。唯一できるとすれば、これしかないか・・・

と、香水シリーズの作品
Scents of Holland (2008) をリメイクすることにしました。

前に作ったバージョンでは「チーズ」の香りの安定性が悪いことがわかっていたので、とくに力を入れて改善を試みました。

チーズをアルコールに撹拌させ、フィルターしているところ。
(「撹拌」は、私の試行錯誤をこのブログで追っていたその道の方のアドバイスを参考にしました。ときどきブログ上でいただくアドバイスは、ほんとうに貴重です。)



その後、蒸溜してみました。
どうなるかな〜と思いながら。チーズを蒸溜するのは初めてなので、どうなるかはわからないけど試してみるか、くらいの気持で。



ところが・・・

このニオイ・・・ ダメ、わたし。
 
原因(推測): 使ったアルコールが悪かったのだろうか。MEK 1% エタノールは、蒸溜には向かないということか。その他、とくに表現したかったダッチ・チーズらしい香りは、熱を加えたことで壊れてしまったのかもしれない。

ちょうどその折り、イギリスからあるフレーバー・ハウスの社長さんが遊びに来ていました。なんてタイミングのいい人なんだ! 彼からいただいたアドバイスを基に、またやり直しました。



好ましい結果が出ました。
安定性に関する正確な結果は、時を待つ以外にありませんが。



ヒヤシンスに関しては、3月に作ったアンフルラージュを基に、エキストラクトを作りました。その頃あまりにライデンのプロジェクトで忙しく、濃度を高める暇がありませんでしたが、かなり自然に近い匂いが採れました。







明日ブリュッセルFoAMの BAZAAR で売ってきます!
ギャラリー・プライスでは30ユーロ(じつは大特価)にしてるけど、明日はいくらに設定したらいいでしょうかね。
わりとたくさんの人に買ってもらえる値段にしたいのだけど。

2009/10/22

The Scents of Holland: FoAM にて展示販売のお知らせ

showing and selling
Scents of Holland
at FoAM (Brussels, BL)



To celebrate the fertile relationships between humans and plants, FoAM (Brussels, Belgium) invited artists, gardeners, cooks & engineers, to share their prototypes, works in progress and other curiosa at the groWorld bazaar.

The stalls will include local and trans-local produce, such as:

- groWorld plant game prototypes by Tale of Tales & FoAM
- groWorld gardeners web by Sixtostart
- Urban Edibles by Foamlab Holland
- urban gardening info-booths by FoAM & Foamlab
- biologically corrupt hard-drives by Angelo Vermeulen
- PhoEf organic solar cells by Bartaku
- patabotanical illustrations by Lina Kusaite & Theun Karelse
- experiments with plant sensing by Nik Gaffney & Dave Griffiths
- vegetal scents by Maki Ueda
- seasonal botanical refreshments by Rasa Alksnyte & Pieter de Wel
-...

Join us at FoAM, for a colourful evening of browsing & lounging, learning & playing, from 6-9PM on the 29th of October 2009.
29 Oct 2009 - 18:00 - 21:00

FoAM
Koolmijnenkaai 30-34 Quai des Charbonna
Brussels

about the work 'The Scents of Holland':
http://www.ueda.nl/scents_of_holland

about the BAZAAR
http://grig.info/groworld_bazaar

Edible Perfume Workshop @ Dordrecht

original site: Camera Japan Festival

Edible Perfums

zaterdag 10 oktober

Workshop 'Edible Perfums' door Maki Ueda.
Geuren worden ontrokken uit eten, geinspireerd door het foodparing concept. De deelnemers namen twee basisingredienten mee en maakten daar hun eigen 'eetbaar parfum van'.
De resultaten werden 's avonds tentoongesteld tijdens [F]luister.