2019/01/01

においあそび / 岐阜IAMAS生徒の最終プレゼン













2019年元旦に寄せて 近況報告

あけましておめでとうござます。

昨年中はみなさまに大変お世話になりました。今年もご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

最近は自分の生活(おもに母親業)に必死で、近況報告もままならず。この際一気に、ご報告させていただきます。

昨年9月末より、今年の2月半ばまでは、息子の高校受験につきそい、実家のある千葉を拠点としています。

ですが、仕事場は石垣島に残したままなので、

年末年始は石垣島に飛び、アトリエに籠もり、展覧会の準備に励んでおりました。

  • 2019年2月〜2020年2月 @スイス、ローザンヌにて、嗅覚のための迷路 ver.2

日本での依頼が順調に増えています(同時に実現しなかった案件も増えています...笑。日本で新しいことをやろうとすると、やはり壁もあります。)

通信教育「香りの学校」も順調で、生徒が育ってきていることに喜びを感じています。

振り返るのは得意ではないのですが、2018年を振り返ると...

  • Art and Olfaction Award の受賞(ロンドン)
  • ブラジル/ジャパンハウス での展示
  • アメリカ/ポートランドでの展示
  • オランダ/アムステルダムMediamatic "Odorama" 参加
  • オランダ/アムステルダムMediamatic "Het Perfume"  参加
  • 香港LOFTWORKでのWS
あたりが大きなできごとでした。車の運転中に後ろから追突され、むち打ち症と戦う中、なぜか海外出張が続くという...体には厳しい年でした。

国内では、

  • 渋谷アツコバルーでの「なつかしさの匂い」展示
  • 東京LOFTWORK/MTRL TOKYO でのWS
  • Wild Mind Go Go への寄稿→出版
  • 岐阜IAMASで教えた

あたりかな? なにか忘れているような気がしてなりませんが...

折しも、ロッテルダムのメディア・アート・インスティテュートV2創設者のアレックス・アドリアーンセンが、年末の30日に亡くなったという悲しいニュースが飛び込んできました。

お葬式に出れるわけでもないので、ここに私のやり場のない私の気持ちを綴るのみとなってしまいますが...

彼は世界中のメディア・アーティストに機会を与え、影響を与えてきた人でした。私自身も例外ではなく、オランダでのスタートアップ時代より、ずっと支援いただきました。もとはというと、私の師匠が彼と友人だったことにより、私はオランダにご縁ができたという経緯があります。つまり、私の人生を変えた、そう言っても過言ではない方です。初めてお会いしたのは確か23歳の頃で、最近までずっと変わらぬ支援をくださった、恩人そのものです。

誰にも暖かく優しく、ポジティブに接してくれる人でした。誰よりも仕事をし(土日もオフィスにいました)、ディレクターなのに現場でドライバーを握る人でした。最後に会ったのは1年ちょっと前、確か25周年イベントでしたが、やはり自ら会場の椅子を片付ける人でした。

仕事もたくさんご一緒させていただきましたが、難しいことも厳しいことも、優しい微笑みでおっしゃる人でした。私のようにアジア人として西洋で戦うとき、彼のこの暖かさは救いでした。彼には半分アジア人の血が流れており、そのような背景が、この奇跡のようなヒューマニティを生んだのかもしれません。

ただその人柄が今は懐かしく、ジーンときています。私もこのような種の撒き方ができるだろうか、そう自問自答せざるをえない元旦となりました。

アレックス、あなたにお会いできて、一緒にお仕事できて、光栄です。ほんとうにどうもありがとう。

2018/11/19

Tangible Scents / 触れる香り(新作)

先週、ポートランドのReed Universityにて 新作を発表しました。


 5種の香りづけしたシャボン玉液を用意し、5台のシャボン玉マシーンからシャボン玉を出し、 香りのフィールドを作るという作品を発表しました。

メインのコンセプトは、 「香りにズームイン・アウトができる体験」 です。その場全体ではローズの香りがしているけれども、 1個1個のシャボン玉をつつくと、ちがう香りがする。このように意識をズームイン・アウトすることで、 しかも香りを触るといったフィジカルなアクションを介することで、香りという概念をよりよく理解する、 というのが趣旨の作品です。 

この際、香りはなんでも良いのですが 最近わたしは「ローズ」をテーマにしています。 ローズの主成分5種を使いました。 ローズは普遍的に好まれる香りだからという理由で選びましたが これが「オレンジ」でも「ジャスミン」でも良いと考えています。

このように、最近の私は、「香りを置き換えても作品のコンセプトが変わらないもの」 を心がけています。





The 2018 artistic directors of Reed Arts Week are enthralled to present this year’s festival: Sensation. This theme can be interpreted in a plethora of ways, including, but not limited to bodily, media-based, and religious sensations. We recognize that the art world often prioritizes our vision, and, through the theme of sensation, we are encouraging artists and patrons alike to challenge this axiomatic primacy of sight in exchange for an interest in collective, spiritual, and somatic resonance.  


While the title of our festival employs the word “art,” we are emphasizing the interdisciplinary nature of Sensation. Both student and professional artists will appropriate campus as stage and scenery for poetry readings, dance pieces, theatrical and other performance works, live music, and, of course, the display of visual art. Featured artists and performers include: international olfactory artist Maki Ueda; poet Marty McConnell; fashion designer Eda Yorulmazoglu; animator Eric Dyer; artist Stephanie Gervais; poet Esther Belin; photographer Parker Day; 11:Dance Co.; photographer DJ Meisner; and musical performers Marquii and DJ Manny Petty. 


This year’s Reed Arts Week will take place from November 15 – November 18, 2018, on Reed College campus. While a group of Reed faculty initially introduced Reed Arts Week in 1990, the festival has come under the jurisdiction of students and this is the first year in which the annual event will be institutionally stewarded by the Douglas F. Cooley Memorial Art Gallery. All events are free and open to the public.

2018/09/16

グラースに行ってきました!

香水の街、南仏グラース。まさに10年ぶりでした。

グラースを10年前と比べると:
・観光化が進んだ。
・MIPがリニューアルオープンした。
・道路が整備された。ガタガタしなくなり、広くなった。カンヌへの高速ができた。
・グラース人が英語をしゃべるようになった。
・中心街のダウンタウン(スラム)っぽい雰囲気がなくなった(アフリカ・モロッコ系移民が街から消えた→市の努力?)
・地元民の小さな街角のバーが消えた(→地代が上がった?)
・街灯がオレンジ灯からLEDに変わり、中世の雰囲気が消えた。
・Fragonardがチェーン化した。(当時は1店舗しかなかった)
・MolinardもFragonardも調香体験のサービスを作った(当時はGalimardのみ)
・これらブランドの提供する体験の差別化がすすんだ。
・あちこちで畑が公開された。

10年前、グラースではローズもジャスミンもほとんど生産されていないとGIP(調香師学校)で教わりました。生産の拠点はすでにエジプトやインドに移り、いまグラースにあるのは化学工場と知識産業のみ、と。なので一面のお花畑を見学したいと生徒が要望すると、そんなものはもう存在しないとの返事でした。そこでオープンしたてのMIP(国際香水博物館)のガーデンに連れて行ってくれたのです。当時、一般向けの畑も、ツアーも、存在しませんでした。畑を公開していたのはおそらくそこだけだった。今考えると、グラースは、転換期だったのかもしれません。その翌年、MIPがリニューアルオープンし、観光地化が急速にすすんだと聞きます。

ガーデンに関しては、DiorがDomaine de Manonという荘園を使って、あるいはChanelがPegomasの荘園を使って、MIPの真似をしつつ、ステータスを高めようとしたとも考えられます。

学校で教わったもうひとつのこと。Rose du Mai や、Jasmin grandifolia など、グラースの土壌で品種改良された香水用の花は、他の産地のよりフランス産の方が品質が高いと、学生は教わります。ですが実際は、フランス産のローズもジャスミンも、市場にはまったく出回ってません。「自社畑所有の大きな会社が独占している」といった都市伝説も考えることができますが、単に高コストのためほとんど生産されていないのかもしれません。されていたとしても、実用のためではなく、単なるステータスのためのようですね。いずれにせよフランス産香料の希少価値を高める結果となり、やはりフランスにはかなわないんだなあと思いました。

とある友人のフランス人は、シャネル・ローズ生産者のファミリーの出身と聞いています。Domaine de Manon のような家柄かと想像されますが、現在は直接的な香料ビジネスを離れてしまったとのこと。グラースの生産者も生き残りが大変なのだと思います。

私自身も小さなアトリエを経営をしているのでとてもよくわかるのですが、付加価値を高めないと貧乏暇なし状態に陥ります。自分で石垣島の草花を抽出しているため、石垣産コスメを作る業者などがやってきて、それを売ってくれと頼まれます。ですが私は決して香料としては売りません。1滴のエッセンスに、どれだけの付加価値をつけることができるか、試しているからです。たとえば調香体験でのみ使用できるとしており、付加価値を高めています。

グラースも、もともとその素質があったとはいえ、市の施作もあって、10年前よりも体験を売ることに成功していると感じました。

そしてもうひとつ考察したのが「何のための匂い香りか?」という点。匂い香りは西洋ではざっくりいえば媚薬的に、そして日本では癒しに使われます。いわゆる効果効能ですね。でもそれは、脳の機能でいえばおそらく、快楽を司る部分しか使っていないのでは。そんな風に、チンパンジーやゴリラと同レベルでよいのか?という考えが浮かびました。やはりもっと抽象度の高い幸せを求めるべきではないか。そのための、共通言語としての匂い香りは可能なのか? 

難しい話に聞こえますが、今回お土産として香りを買うのに苦労しました。誰かを香りで喜ばせたい、幸せにしたいと思った時、案外難しい。「これでいいのか?」と疑問に思いつつ、身近な人へ何かしら香りのお土産を買うチャレンジをしました。すでにひとり「絶対この人香水を嫌いそうだけど…」と思われる人に渡しました⇨喜んでました! 実は興味はあったけど、出会いがなかった模様。香りで自分を幸せにするのは簡単だけど、他人を幸せにするのは難しいし、勇気が要りますね! でもここにコミュニュケーションのkeyがあると思いました。昔の香遊びや、香道のような深いコンテキストには及ばないかもしれませんが。

2018/05/25

プレス・リリース:ジャパン・ハウス サンパウロで、香りと味にフォーカスした 『Aroma & Flavor』展を開催

ジャパン・ハウス サンパウロで、香りと味にフォーカスした
Aroma & Flavor』展を開催

嗅覚のアーティストによる嗅覚のための迷路を体験でき、
視覚やメディアを通じたインタラクティブな作品を展開。


65日から930日まで、ジャパン・ハウス サンパウロにて『Aroma & Flavor』展を開催する。インタラクティブ性・メッセージ性あふれる内容となっており、楽しみながら日本を象徴する香り・味の多様さを探っていくことができる企画となっている。本展では体験、コンセプト、化学・アート的な側面から香りと味を紐解いていくもので、例えば5つの基本味(甘味、苦味、酸味、塩味、そして日本で発見されたうま味)とは何か、そしてヒトの身体はどのように味を認識しているのか、食べ物の味はどのようにてきているのか、はたまた、嗅覚は味の構成にどのように影響しているのか、香水や消臭剤、石けんはどのように作られているのかなどを提示している。 

これらは全て、Identification(アイデンティティ)Construction(構成) Sensory(感覚)の、3つのコーナーに分かれた本展で解き明かすことができる。Sensory(感覚)のコーナーでは、日本人アーティスト・上田麻希氏による嗅覚のための迷路 ver. 4 Discovering the cherry blossomsという、自分の嗅覚を頼りに桜の香りを見つけていくインスタレーションも展開される。 
上田氏は6619時~、日本の香りの紹介等を行いながら、本インスタレーションの解説を踏まえつつ、香りにまつわる過去の作品や日本の香りを楽しむ文化について講演する。「自らの芸術活動において、香りを媒体にしながら、嗅覚をアートへと変換させてきました。一般的に匂いや香りというと、香水やトイレタリー製品、フレーバーといった実用的なものを想起されがちです。一方で、わたしは香りに紐づけられる記憶や感情、知覚や体験に焦点を当てています。絵画のように、作品としての香りを提示しているのです」と上田氏は述べる。 

本展はジャパン・ハウス サンパウロが主催し、キュレーターにFelipe Ribenboim氏を迎え、昆布やわさびといった食材や飲料、香水などにも使用される、日本の伝統的な味・香りを紹介する。Ribenboim氏によれば、「香りや味がどのようにできているかを見せるだけではなく、文化的な価値をも表現している。それらは、様々な文化圏において、異なる意味を持つ要素なのである」。

今回、高砂香料工業の特別協力を得て、日本のぶどう、メロン、わさび、醬油、いちご味のグミのブラインド・テイスティングを実施する。ジャパン・ハウス サンパウロのNatasha Barzaghi Geenen企画局長は「日本文化を紐解いていくにあたり、その多様な側面を紹介していくことはとても重要。本展では来館者が持つ感覚を使って、日本ならではの世界を体験できる、これまでになかった切り口の企画である」と語る。

Aroma & Floavor』展はジャパン・ハウス サンパウロとBase7 Cultural Project社による企画のもと、Bombril、全日本空輸株式会社・ユナイテッド航空、高砂香料工業株式会社、ブラデスコ保険によるスポンサーと、PROAC(文化活動プログラム)や文化促進法令に応じた施策の一つとして開催される。



Aroma & Floavor』展
開催期間: 201865日~2018930
ジャパン・ハウス サンパウロ Av. Paulista, 52 –2階)

上田麻希氏による講演 「香りのアート」
日時:66日(水) 19
場所:ジャパン・ハウス サンパウロ Av. Paulista, 52
入場無料
参加方法:講演開始の1時間前より、整理券を配布いたします。
日本語-ポルトガル語の同時通訳があります。

ジャパン・ハウス サンパウロ(Av. Paulista, 52
開館時間:
火曜日~土曜日 - 10 22
日曜日・祝日 -   10 18
入場無料
プログラム詳細は公式Facebookにてご確認ください:www.facebook.com/JapanHouseSP/


お問合せ窓口
コミュニケーションサポート: 電話番号(11) 3035-3070
Daniela Boanova: dboanova@suportecomunicacao.com.br |内線123
Thaís Vallim: tvallim@suportecomunicacao.com.br | 内線 148

ジャパン・ハウス サンパウロ
Fernanda Araujo: fernanda.araujo@jhsp.com.br | (11) 94543-2079
Mayumi Orimoto: mayumi.orimoto@jhsp.com.br | (11) 94543-3624

20185

2018/05/24

嗅覚のための迷路 ver.4


外務省の機関、ジャパン・ハウス・サンパウロの依頼により、来週からサンパウロに行って来ます。展示&講演してきます。

展示するのは新作「嗅覚のための迷路 ver.4」。「お花見」がテーマです。日本人はお花見が大好きです。4月にはいちばん立派な桜の木の下で宴を催し、酒を飲みます。桜は夜にこそ、ほのかに匂います。真っ暗な闇で、その ほのかな香りをたどって桜の木にたどり着けるかどうか、、、そんな迷路を再現しました。

匂い物質とその強度の関係について、Weber-Fechnerの法則が知られています。 匂いの強度をI匂い物質の濃度を Cとすると

I = a log C

で表すことができるというものです。この場合、は各香料固有の定数です。匂いの強度を2倍に するためには、香料の濃度を10倍にしなければいけないことを表しています。また逆に、匂い物 質を90%除去しても、匂い強度は半分にしかならないことも同時に示しています。この法則を今 回の迷路に応用しました。

この迷路には、3本の見えない桜の木があります。匂いの強い方向に進めば、きっと見つかります。

場所:ジャパンハウス サンパウロ (Paulista St, Sao Paulo)
オープニング:2018年6月5日 展示はその後3ヶ月続きます。
講演会: 2018年6月6日



とあるインタビューQ&A

Q: もともと香りに対して敏感でしたか?それとも、その敏感さや感覚は誰でも作り上げる事が可能だと思いますか?

A: もともと好きでした。子供のころにポプリを作るのが趣味だったので。ただ、敏感さとはまた違うかもしれません。私の母は匂いを仕事とはしていませんが、私よりよっぽど匂いに敏感で神経質です。過敏ともいえるくらい。母の場合はそういう生まれながらの性質なのかもしれません。

私の場合は、好きであり、興味がある(悪臭であっても)ので、理解も深まり、敏感になっていったのかもしれません。きっと興味があれば誰でもそうなっていくと思います。

Q: いつ、そして何がきっかけで香りへの興味がわきましたか?

A: 幼少の頃にも興味があったのですが、アートの手段として取り組み始めたのは2004年の妊娠・出産がきっかけでした。ホルモンのせいだと思うのですが、ゴミ箱の匂いが気になってしょうがなくて、部屋の隅に隠すのですが、それでも気になって、とうとう外に出してしまったことがあります。そして生まれたばかりの息子とのコミュニケーションも、嗅覚だけでない本能的な感覚によるもので、おどろきました。それがおもしろかったんです。

Q: 上田さんの活動をおこなっている中で、いつ、それがアートにもなると思い始めましたか?最初の頃、上田さんの行う活動は何と呼ばれていましたか?

A: 私はもともと大学で、マクルーハンに影響を受けた学問(環境情報学)を学んでおり、卒業後もメディア・アートやインタラクティブ・アートをやっていたので、匂いもアート表現のひとつの「メディウム」として捉えるというのは、ごく当たり前のことでした。なので、最初から、次の時代のアートとして意識的に取り組みました。記念すべき1作目は、様々なお茶やコーヒーの匂いを蒸留で抽出して「MENU FOR THE NOSE」という作品を作りました。

当時は olfactory art という言葉は一般的ではなく、自分の活動を表現する言葉を自分で考えました。最初はscent art あるいは smell art など簡単でわかりやすい表現を使っていましたが、そのうち私が興味あるのは匂いではなく嗅覚であることがわかってきて、 olfactory artist というふうに自己紹介するようになりました。(その時に、gmailのアカウントで、 olfactoryart というユーザー名を取りました)

じつは当時、メディア・アートの世界ではMITの周辺ですでに haptic art が成立していたので、その延長で olfactory art という言葉が思い浮かんだのです。私が突然メディア・アートから抜けて、電気を使わない超アナログな嗅覚アートをやりはじめたのに周囲は驚いていましたが、私には当時から、このアートフォームが現在のように発展するビジョンが描けていました。なので、冒険する価値はあると思ったのです。

Q:「香り」は新しいメディアだと仰っていますが、技術の発展と様々な問題を抱えている今の世の中、香りはどのような重要性があると思いますか?

A: いま生きることをあらためて考えさせてくれるものだと思います。私たちは、息をしながら、生きています。そのたびに実は匂い分子を取り込み、嗅いでいる。それだけ生きることにつながる、本能的な感覚です。大事なものは何かを見失った時、よい匂いを嗅ぐといいのかもしれません。嗅覚に意識的になることは、健康にも良い影響をもたらすはずです。

Q: 人々は忙しい生活を送っているため、4つの感覚に気付かず過ごすことがあると思いますか?これは人の記憶に影響を及ぼすと思いますか?

A: 記憶どころか、生きていることの豊かさを忘れてしまうのではないでしょうか。いまこの瞬間、そこで嗅いでいる香りは、その時の、あなただけのものです。もう2度と追体験することはできないし、他の人が同じ体験することもできません。そんな貴重な機会を逃しながら生きる人生って、もったいないですよね!

Q: 国民によって、香りに対して敏感だったり鈍感だったりしますか?

A: 嗅覚の国民性に関しては、生まれ育った日本はとくにユニークだと思います。1000年以上も昔から、日本人は香と詩歌のマッチングゲームのような遊びを嗜んでいました。それがのちに香道へと発展します。匂い・香りは分子であり物質なのに、それを日本人は現象として捉え、想像の世界で抽象的に遊びます。

一方で、西洋では匂い・香りはもっと物質的です。「生物のシグナル」的な捉え方をします。匂いが染みついたハンカチを渡して異性を誘ったり、香水をフェロモン的に使ったり。病気の原因は悪臭であるというふうに捉えられていた時代もあり、病気に打ち勝つために匂いが使われてきた歴史もあります。

日本人としてのバックグラウンドは確実に私の作品に反映されていると思います。