花魁コスプレの舞台裏
[衣裳]
花魁用の着物や鬘も、予算の制限もありホンモノを全て揃えれるわけではない。(というか本来、匂いの作品第一、コスプレ第二、で あるわけで。すぐそのことを忘れちゃうんだけどね 笑)なのでなるべく自前のものを使い、アレンジしました。この衣裳は、数年前にたまたま奈良の道端で見つけたもの。豪華ですが正統な花魁衣裳ではありません。下着類は作り、襦袢にもかなり手を入れ、紐などの小物は祖母の形見を使わせてもらい、帯はロッテルダムのマーケットで購入したゴブラン織(カーテン生地)で作りしました。
帯がゴブラン織、というのは意外な組み合わせでしょう? 丸山遊女にはその当時、オランダ人からたくさんの贈り物が贈られました。報酬は角砂糖で支払われたともいいます。それな ら、当時はかなり稀少価値の高かったゴブラン織りも、丸山遊女には贈られたということも充分ありうる・・・と考えたのです。東照寺や金唐革などの、洋の東西を問わない中世的な世界観にも通じる、バロック風の唐草模様を選びました。(田中優子「江戸の想像力」参照。)これを見たオランダ人は「あれ? あの帯・・・なんか おばあちゃん家のカーテンみたい」とちょっとびっくりされかも知れませんね。
[メイク]
普段たいしてメイクもせず、つけるのは自家製化粧水とクリームていどの私。今回のプロジェクトのためにもメイク用品とメイク落としなどを一式揃えて調達せねばならななかった(つまり自前のを持っていなかった)私に、はたして花魁メークなんかができるのか・・・という疑問と不安は大いにありました。花魁を不安にさせないために黙っていましたが(笑)
が!
やればなんとかなるもんです。お絵描きはもともと得意だし、思えばメイクの経験が無いわけではなかったのです。遠い昔、アメリカでの高校生活では毎日、恥ずかしいほど厚化粧してましたっけ。
花魁メイクは、「三善」舞台用メイクマニュアルを参考にしつつも、なるべく素顔を生かすように努めています。いわゆる手抜きというやつ(笑)かもしれないですが「夜桜化粧」の色っぽさは出すようにはしてます。白粉下のファンデーションには、展示しているのと同じ「伽羅の油」を使っています。これが花魁から匂い立つ香りの正体です。そしてお歯黒は日本のパーティ用品ショップで仕入れましたが、これがなぜかドイツ製。
[着付け]
着付けにしてもよっぽどプロの人を頼みたいくらいでしたが、オランダとなるとそのプロの絶対数さえ多くはないので・・・はい、私がやってます。昔、親友に着付けのポイントを教えてもらったその経験だけでやってますので、相当怪しいですが、花魁に手伝ってもらいつつなんとかなってます。まあ花魁という商売柄、キッカリよりはフンワリと、着崩れしにくいよりは脱がせやすいように(笑)を心がけて、補正などはなるべく使わないようにしてます。
[鬘]
鬘(かつら)はどうしようかと、最初は途方に暮れましたが、知人に聞き回り、なんとか日本で中古品をゲット。簪(かんざし)類は、鎌倉の「かんざし屋」のご主人(すごいです。螺鈿づくり云十年という方。)と相談しながら、花魁なら最低これだけあれば格好つく、というものを揃えました。当初は伝統を行かずに現代風にアレンジしちゃおう!とも思っていたのですが、あれこれ選んでいるうちに結局、「黒髪に黄金の鼈甲」の王道が私の目に最も美しく映ったのでした。ポックリ下駄と簪だけでも、けっこうな出費。
こういった材料や小道具は主に、日本に行っていた10日間で仕入れました。でもオランダに戻ってから、足りないものが次々と出るわ出るわ・・・ そこはもう、あるものでなんとかするしかないのです。それがまた挑戦でもあり、腕の見せ所でもあるわけですが。その道の方々の目には「ちょっとこれ、違うんじゃない?」と映る部分はたくさんあるかと思いますが、なにとぞ、お手柔らかに・・・。
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