スープは香水のように


味噌汁には葱の輪切りを散らし、お吸い物には三つ葉を散らします。具に合わせていろいろなバリエーションがあるかと思いますが、最後に緑の何かを最後に散らすと一段上の味になりますよね。なぜだろう?と考えてみたのです。

葱や三つ葉は、調香でいうトップノートなんですね。とすると、ミドルノートにあたるのは具で、ベースノートにあたるのは出汁かな。

世界にはいろんな伝統的なスープが存在し、そんな風にスープをパフュームのように見立ててみると、こんなふうにまとめることができます。





もちろん厳密に区分けをすることはできません。たとえば味噌の風味にもトップノート的な要素があるのですが、あくまで「突出している」という点においては、葱が勝ります。

味噌汁を作る時に、「グツグツ沸騰させてはいけない」と教わりましたね。どうしてでしょうか。仮に蓋を開けてグツグツさせてしまうと、トップノートとミドルノートは空間に飛んでしまい、ベースノートと非水溶性の食物繊維しか残らなくなってしまうのです。それはそれで、「んー、美味しそうな匂い!」と家族には好評かもしれませんが、もったいない。

スープを作る時は基本的に、蓋を締め、沸騰するかしないかくらいの温度を保つのが美味しさの秘訣です。蓋には、案外強い香りがついてしまい、香りを拭うのが大変であるこを、みなさんもご存知でしょう。スープが加熱され、液体が蒸発する際(気体になる際)、蒸気圧という圧力が発生し、その圧力により香り成分も気体となり、それが蓋について冷やされ、結露(凝縮)する。この水滴には、たくさんの芳香成分が含まれています。

この結露がスムーズにもとの液体に還元されるよう、蓋の形がスープ用に工夫されているも鍋もあります。

しかしもしこの液体を効果的に収集することができれば、それは「蒸留」という抽出法に限りなく近くなります。



この原理を応用し、私は「味噌汁の香水」という作品を作ったことがあります。私の初期の作品です。

TIPS: 味噌汁の香水の作り方

味噌汁を蒸留して、香水化する方法です。

材料
    •    葱(トップノート)
    •    わかめ(ミドルノート)
    •    鰹出汁(ベースノート)
    •    ティーフィルター(素材を入れるため)
    •    精製水
    •    使用機材:蒸留機

きちんとバランスのとれた仕上がりにするには、トップノート、ミドルノート、ベースノートとそれぞれ別々に素材から匂いを抽出し、最後にその3つで調香します。媒介としては精製水を使います。

材料をできるだけ細かく刻み、それぞれ蒸留します。蒸留機を洗う手間を考え、トップノートから順に行います。

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