嗅覚のアート展 展示の裏話(1)



ドイツにて、「嗅覚アート」の展覧会があり、作家として招待され、展示をしてきました。

私が発表したのは「嗅覚のための迷路 ver. 2」。東京でやったもののリメイク版で、ほんものの迷路を、木の板で、4.5m x 4.5m の空間に作ったのでした。

その空間では、犬のように嗅ぎ回ります。最初に嗅いだ匂いを辿り続けることができれば無事にゴールに着くのですが、間違えたら、文字通り「迷宮入り」(笑)

オープニングではドイツ人、おおいに迷っていました!笑

木の匂いをふんだんに使いました。セダー、乳香、パチュリ、シスタス。木の板と調和すると考えたからです。セダーを辿れば、ゴールに着きます。

「森の中で迷う getting lost in a forestという感覚を起こさせる」と、このセレクトは好評でした。


ミュージアムは南ドイツの片田舎にあり、かつての富豪のヴィラでした。

末裔がいなくなり、財団の形をとってアートミュージアムとして公開されています。

そこのディレクターであるステファニーが、特筆すべき人物でした。

さっぱりとした笑顔のハンサムな女性です。

喜んでひとり何役もこなします。ディレクターであり、キュレータであり、大工であり、掃除のおばさんであり、運転手であり。

「わたしは、アーティストのためにここにいるの。アーティストが世界中から来てくれて、展示してくれる。これ以上にhappyなこと、ないわ。」

と、ランチもディナーもとらないで、黙々と設置を続けます・・・

常識で言えば、13作品もある展覧会なので、設置スタッフという名目の手下が5人くらいいてもおかしくないのです。

それを、ディレクター自ら、つなぎを着て、大工仕事をするのです。

かつ、ディレクターとしてアーティストのケアは最大限に提供します。

この人にはエゴというものがないのでしょうか。

ストレスというものがないのでしょうか。

怒りというものはないのでしょうか。

見習うべき見事な仕事ぶりでした。生きた仏様を見たというか・・・。

自然と「この人を助けたい」と思うのです。人が集まるのです。

わたしもこんな女性になりたいと、

新月の日。肝に命じました。


海外でのグループ展は、日本人作家(とくに女性)にとってはハードなもんです。

じぶんひとりだけならいいけど、同じ時期に集中して設置する作家が他に何人もいます。

なにしろじぶんではなにもできないもので、

そのハコ専属のアシスタントの取り合いです。

自分の権利を主張しあって、勝たないといけないのです。

ときにはコンセントひとつ借りるのに、何時間も待たなければいけません。

そんなとき、どんなに厚かましくても図々しくてもいいから、アシスタントを囲う技が必要となります。

東洋の女性は、女性の武器を使えば簡単ですが、それは使わない主義です。

日本人は、西洋人アーティストにはエゴの主張では完全に負けてしまいます  ^^;

わたしももともと、「それなら、1日でも2日でも待つか」というタイプの我慢人間です。



今回の設置は、おどろくほど楽でした。

着いたときにはすべての工事が終わっており、

私が壁に香りをスプレーするだけで良いように仕上がっていたんです!

ドイツってすごい。いや、ステファニーすごい。

その後も、細かい展示テキストを貼ったりという作業が残っていたのですが、

私がリマインダーをしようと思いきや、私の顔を見て

「あれやっとくわね。忘れてないわよ!」

とウィンクして、颯爽と去って行くのです。




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