香りの三原色の実験

7月に東京でオープニングを迎える新作インスタレーション「白い闇」のために、最近いくつか空間実験をしました。メモをこちらに記しておきます。


その新作とは、建築家ヨコミゾマコトさんとのコラボレーション。詳しくは4月末にアナウンスできる見込みです。ほぼ真っ暗闇の中、耳と手と鼻で空間を探っていきます。





今回の実験のテーマは「3つの香りを空間に流したら、どのように空間の中で混ざり、それをどのように私達は知覚するのか。香りの3原色のグラデーションを、どうやったら描けるのか。その変化は、空間での鑑賞者の動きに動機を与えるか。」

香りはすぐ混ざってしまうので、グラデーションなんて描けないというのが常識です。確かにそうなのですが、ここが私の腕の見せ所です。もちろん前作OLFACTOSCAPEの経験があるのでできることですが。

1回目は自宅にて、2回目は東京芸術大学の建築学部にて、3回目は赤坂見附のとあるオフィスルームにて実験を行いました。

香りを流す仕組みは、自作のシステムです。微妙に空気が流れるようになっています。取り込み口の直の風圧が手持ちのアネモメーターで2.6。管をつけると、3つの排出口は抵抗により検出できないほどに下がってしまいます。でも、肌で空気が流れている事が感じられるていど。

1回目:

3/23 自宅にて。3.5畳の部屋。
香りの3原色:
(1) Citrus (Aromatheque)
(2) Geranium (Aromatheque)
(3) Ceder (Aromatheque)
・15分くらいは、目を瞑って這いつくばって知覚できる。その距離30cmくらい。







2回目:

3/25 東京芸術大学の建築学部にて。6.5m x 4.5m、天井3.5mほど。壁の一面は吹き抜け。
第一ラウンド/14:05〜
香りの3原色:
(1)Petit grain (aromatheque)
(2)Arabisce Wierook (primavera) 乳香
(3)Jasmine (aromatheque)


・空間の風洞の特性により、90度ずれた場所に香りが流れていた模様。
・乳香、ふんわり残る。包むような感じ。「シャボン玉に包まれる感じ」 被験者女性談
・乳香について「焚き火の匂い」被験者女性談。乳香も木の樹脂なので、もっともな答え。
・乳香について「ヒノキ」被験者女性談。日本人は木の香りをどうしてもヒノキと錯覚してしまいがち。
・Petit Grain すぐ上に飛んでしまう。top note は厳しいか?
・被験者女性1(学生):匂いの壁を微細に感じてくれた。「あ!もしかして。匂いがする。」「ここから匂いが違う?」
・被験者女性2(学生):「匂いが違う、ということをあの奥の角で感じました」
・被験者女性3(職員):「匂いの変化、感じる。このへんはほっこり包まれるような感じがします」
・被験者男性1(職員):「言われてみれば匂いが変化するのがわかりますけど・・・」
・被験者男性2(職員):音のインスタレーションだとカンチガイする。
結論:男性と女性はぜんぜん感度が違う。

第二ラウンド/15:45〜
香りの3原色:
(1)Jenever  (aromatheque) 
(2)Ylangylang (primavera) 
(3)Cedar (Aromatheque )

・Jeneverbes 森そのものの匂い 。「シンプルなほうが想像働く」被験者男性談
・Ylang ylang くどい。上に上がってしまう?
・Cedar 意外に匂わない? 鼻が既に疲れていたのか?






3回目:

3/26 とあるオフィスルームにて。実験というより、デモ。8m x 8m、天井2.5mほど。(目視)

香りの3原色:
(1)Jenever (aromatheque) 
(2)Geranium (aromatheque)
(3)Arabisce Wierook (primavera) 乳香

・Geraniumはこの空間との相性が良い。
・Jenever はすぐ飛んでしまう。ほとんど匂わないほど。
・乳香は芸大の方が相性が良い。



「匂いって、もしかして絵の具と似ているんですね。絵の具も塗りたてと乾いているときと発色が違いますよね。乾いたら、重たい粒子が底に沈んでしまうから。」

建築家さんとの刺激的なコラボレーションです。



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