馥郁たる麹の香り〜和蔵酒造見学〜

頃は大寒。友人に誘われ、千葉富津の和蔵酒造さんの酒造見学に行って来ました。

富津は房総半島の南の方、東京湾に面した岬です。 やや迷ってしまったので、海に面した駐車場で友人と缶コーヒーでひといき。 内海ならではのフェミニンな海の風と香りの美味しさが、肺の奥まで優しく染み渡ります。

 

着くとまず、あったかい甘酒で出迎えてくださいました。それがまた、とっても濃厚なクリームの味のする甘酒ではないですか。まさか、ミルクが入ってるってわけではないですよね・・・?

「しぼりたての酒粕を使ってますからね。」

すごい。日本酒と牛の乳のどこに共通点があるのかさっぱりわからないけど、とにかく美味しくて腹の奥が暖まったということで、さっそく蔵を見にいきましょう。


ここに、できあがったお酒が眠っていらっしゃいます。


神様はいたるところに。


黴(かび)もいたるところに・・・。

「こういう微生物が、お酒の味を決定してるんですよ。蔵を建て替えたら、お酒の味が変わってしまうほどです。」

なるほど、この蔵も古そうなので、お酒の味も深みがありそうです。(^^)


まずはお米がないと何も始まりませんね。もちろん、千葉産のお米を使っていらっしゃいます。


精米したところ。真珠みたい・・・。


それを水に浸します。分単位、秒単位で時間が決められています。化学のようですが、じつはその日の天候にも左右されるので、勘も必要とされます。ここでうまくいけば、後の行程での調整が必要なくなるため、とっても重要な行程なのだそうです。地味な作業に見えますが、この杜氏がとても肝心なところを担っているのです。


この方がその杜氏。米を蒸しています。これも、秒単位の作業。


蒸し上がった米を乾燥します。これも秒単位の作業。


酒母を造っているところです。



酒母は、糖をアルコールに変えます。「酒」の「母」と書くのですね。その通り、お酒のエッセンス(精)なのでしょうか、あらゆる芳香のアスペクトをここで嗅ぐことができます。主に、ピーチ、りんご、梨、グレープなどのエステル系。脂肪酸系、乳酸系も嗅ぐことができます。この部屋に一晩寝れたらどんなに幸せだろう・・・と思えるような香りに包まれます。

酒母がよい働きができるように、お米の炭水化物を糖に変えるのは、麹(こうじ)の役目です。


麹を造っている部屋の湿気と気温は、厳密に管理されています。外が寒くても、ここは常夏。



 
こちらは大吟醸(だったかしら?)の醪(もろみ)という状態。高級なお酒ですので、社長室ですね。もちろん味見させていただきました。美味しいのはもちろんですが、とてもたくさんの微生物のエネルギーをいただいた感じがしました。そりゃそうですよね、発酵中なんですから。


こちらも、醪(もろみ)の部屋。


できあがった醪を、こちらの機械で絞ります。大吟醸ばかりは吊るして絞るそうですが。ヒダヒダの中に、酒粕が残るわけです。


できあがったお酒のアルコール度数を計る、実験室。よく蒸留に使っている見慣れたスパイラル冷却器が並びます。私的には、痺れるくらいかっこいい部屋でした(^^)

お酒は寒い冬に造るものだそうです。気温が低ければ、発酵をコントロールしやすくなるので、あらゆるケアをする余裕が生まれるのだとか。

そのため、寒地は日本酒に適しますが、九州や沖縄などの暖かい土地では雑菌が育ちやすいので、焼酎なのだそうです。杜氏は新潟の農家の方だったりして、夏はお米を作り、冬は杜氏になるのだそうです。雪で何もできなくなるから、もちつもたれつの良いシステム。

どこでもそうですが、課題は後継者。いま、千葉の地元の方を育成しているということですので、安泰ですね。



絞りたてのお酒、味見させていただきました。感じたフレーバーを記したノートは今、地球の反対側にあるので、思い出せません。すべてiPhoneに記録すべき昨今です。(^^)

思い出す限り、左からいきましょう。

・吟醸生濾過:アップル、グレープなどの豊かなフレーバー。後味さっぱり、きりりとしている。

・純米生濾過:思い出せません。ごめんなさい。

・無濾過:そのままの雑な荒々しい味もあり、おもしろい。料理に合わせると、それぞれに違う味がしそう。

・加水したもの:水のようにさらりとしていて飲みやすい。女性向けでお洒落な味。

最後に、酒粕をいただきました。酒粕ってじつは、私のオールマイティ・コスメティックス。これひとつあれば、美白系の顔パック・化粧水・クリーム・クレンジングとして使えるので、身軽に旅するために酒粕を持ち歩くことも。

でもこの酒粕は、もったいなくて使えないなあ・・・。冒頭に出て来た甘酒のクリームの味は、まだ生きている微生物が織り成す味で、「酒の母」からの贈り物だったんですね!

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