ロクシタンが売る、南仏プロヴァンスの空気
今日はヨガの後、お気に入りのカフェ 't Proef でひとりゆっくりとランチをしました。狭い店内ですが、数人の料理好きのおばさん達が心をこめて手料理を出してくれるお店です。素材はほぼ完全無農薬のものばかり。そうは看板では大々的に謳ってないけど、無農薬の野菜を食べ慣れている私の舌はそう確信していて、彼女達のその謙虚さがまたいいなと思うのです。
何気なく無料日刊紙 De Pers を読んでいて、ふと目に止まった記事がありました。
フタル酸塩、ステアレス、パラベンを使わずにキレイになりたい --- リップスティックの鉛や、シェービング・フォームのフタル酸塩、そして日焼け止めクリームの化学物質系のフィルターなど、化学物質だらけの化粧品。無農薬の食物やコットン素材がブームになった今、ナチュラル・コスメの番
既存の化粧品マーケットの売り上げは年間2%増なのに対し、ナチュラルコスメは年間20%増を記録している。フランスのコスメティカ・ハウスであるロクシタンも、よりナチュラルで安心な化粧品に大いに興味を示している。ロクシタンは世界中に広がるおよそ1000店舗において、プロヴァンス地元農家の製造したオリーブオイルやラベンダーをふんだんに使い、プロヴァンスの雰囲気と匂いを売っている。
「プロヴァンスの雰囲気と匂いを売っている。」ーーーたしかに、ロクシタンが消費者に売っているのは単なる化粧品ではなくて、プロヴァンスの雰囲気とか匂いとかイメージ。プロヴァンスの空気を化粧品に乗せて消費者の元へ届けているのか・・・と妙に腑に落ちる言い回しでした。
化粧品というものはそもそも、香料と相性がいいのです。なぜかというと、香料を身にまとうことで、消費者がその香りを効果的に知覚することができるからです。例えばラベンダーのエッセンス(精油)を化粧品に加えて密閉するとします。消費者のもとに届けられて使われるとき、そのエッセンスが再び空気中に拡散します。しかも消費者の鼻のすぐそばで。すると消費者は、その匂い(空気)を嗅ぐことにより、プロヴァンスへと意識を広げます。こうやって想起されるプロヴァンスの田園的なイメージを嫌う人は、そうそういないでしょう。
昨年の夏、調香師研修で南仏グラースに滞在していた時のことです。(グラースは厳密にいうとコート・ダ・ジュールですが、プロヴァンスとは目と鼻の先。) 世界中のいたるところから集う生徒で構成されるそのクラスで、アメリカから来た誰かが「今日はカンヌの街に降りてあのロクシタンに行ってみようよ。」と言いました。けれどもロクシタンならオランダにも日本にもあるし、なにもわざわざプロヴァンスに居てそのために時間を使うのはどうかな・・・、とひねくれ者の私はそう思ってしまいました。後日、カンヌに降りた時にロクシタンを通りがかりましたが、やっぱり東京のロクシタンとたいして変わらない印象でした。
ロクシタンは、プロヴァンスから遠くにあって価値が出るのではないでしょうか。実際、成田空港のロクシタン・コーナーは、本場ニース空港のそれよりずっと大きいです! わたしが匂いの作品づくりに本腰を入れ始めたのも、あらゆる日本の匂いを抽出して遠くオランダの地で再現しようとした Aromatic Journey #1 がきっかけでした。商品と作品の違いはあるのですが、戦術はロクシタンとあまり違わないかも。
記事の話しに戻りましょう。ロクシタンだからといって完全ナチュラル・コスメというわけでもない、何も加えなかったら保存期限が3ヶ月ともたないから、商品にならない、といった内容が続きます。そのとおりです。クリームを手作りしてる人は、実体験としてそれを知ってます。クリームはマヨネーズとそうたいして本質が違わないので、もってせいぜい2週間でしょうか。
そして私がロクシタンについてあえて付け加えるとしたら、ロクシタンがプロヴァンスのイメージとして売っている「ラベンダー畑」なども、現地には観光用以外ほとんど存在しないというのも現実。そんな手間のかかる農業は、エジプトなど労働力の安い世界にとっとと逃げてしまいましたから。
イメージに騙されずにこういう「現実」(?)を逞しく生きていくための、化学者からのちょっとしたアドバイスで記事は結ばれていました。オランダ語圏にお住まいの方には参考になるかも。
シャンプー等は使用原材料のラベルを注意深く見るように。"eth" で終わる原材料名は危険です。steareth, sodium laureth sulfaat は特に注意した方がいいです。たとえばAscorbinezuur は化学物質っぽく聞こえますが、レモンにふつうに含まれる物質です。
何気なく無料日刊紙 De Pers を読んでいて、ふと目に止まった記事がありました。
フタル酸塩、ステアレス、パラベンを使わずにキレイになりたい --- リップスティックの鉛や、シェービング・フォームのフタル酸塩、そして日焼け止めクリームの化学物質系のフィルターなど、化学物質だらけの化粧品。無農薬の食物やコットン素材がブームになった今、ナチュラル・コスメの番
既存の化粧品マーケットの売り上げは年間2%増なのに対し、ナチュラルコスメは年間20%増を記録している。フランスのコスメティカ・ハウスであるロクシタンも、よりナチュラルで安心な化粧品に大いに興味を示している。ロクシタンは世界中に広がるおよそ1000店舗において、プロヴァンス地元農家の製造したオリーブオイルやラベンダーをふんだんに使い、プロヴァンスの雰囲気と匂いを売っている。
「プロヴァンスの雰囲気と匂いを売っている。」ーーーたしかに、ロクシタンが消費者に売っているのは単なる化粧品ではなくて、プロヴァンスの雰囲気とか匂いとかイメージ。プロヴァンスの空気を化粧品に乗せて消費者の元へ届けているのか・・・と妙に腑に落ちる言い回しでした。
化粧品というものはそもそも、香料と相性がいいのです。なぜかというと、香料を身にまとうことで、消費者がその香りを効果的に知覚することができるからです。例えばラベンダーのエッセンス(精油)を化粧品に加えて密閉するとします。消費者のもとに届けられて使われるとき、そのエッセンスが再び空気中に拡散します。しかも消費者の鼻のすぐそばで。すると消費者は、その匂い(空気)を嗅ぐことにより、プロヴァンスへと意識を広げます。こうやって想起されるプロヴァンスの田園的なイメージを嫌う人は、そうそういないでしょう。
昨年の夏、調香師研修で南仏グラースに滞在していた時のことです。(グラースは厳密にいうとコート・ダ・ジュールですが、プロヴァンスとは目と鼻の先。) 世界中のいたるところから集う生徒で構成されるそのクラスで、アメリカから来た誰かが「今日はカンヌの街に降りてあのロクシタンに行ってみようよ。」と言いました。けれどもロクシタンならオランダにも日本にもあるし、なにもわざわざプロヴァンスに居てそのために時間を使うのはどうかな・・・、とひねくれ者の私はそう思ってしまいました。後日、カンヌに降りた時にロクシタンを通りがかりましたが、やっぱり東京のロクシタンとたいして変わらない印象でした。
ロクシタンは、プロヴァンスから遠くにあって価値が出るのではないでしょうか。実際、成田空港のロクシタン・コーナーは、本場ニース空港のそれよりずっと大きいです! わたしが匂いの作品づくりに本腰を入れ始めたのも、あらゆる日本の匂いを抽出して遠くオランダの地で再現しようとした Aromatic Journey #1 がきっかけでした。商品と作品の違いはあるのですが、戦術はロクシタンとあまり違わないかも。
記事の話しに戻りましょう。ロクシタンだからといって完全ナチュラル・コスメというわけでもない、何も加えなかったら保存期限が3ヶ月ともたないから、商品にならない、といった内容が続きます。そのとおりです。クリームを手作りしてる人は、実体験としてそれを知ってます。クリームはマヨネーズとそうたいして本質が違わないので、もってせいぜい2週間でしょうか。
そして私がロクシタンについてあえて付け加えるとしたら、ロクシタンがプロヴァンスのイメージとして売っている「ラベンダー畑」なども、現地には観光用以外ほとんど存在しないというのも現実。そんな手間のかかる農業は、エジプトなど労働力の安い世界にとっとと逃げてしまいましたから。
イメージに騙されずにこういう「現実」(?)を逞しく生きていくための、化学者からのちょっとしたアドバイスで記事は結ばれていました。オランダ語圏にお住まいの方には参考になるかも。
シャンプー等は使用原材料のラベルを注意深く見るように。"eth" で終わる原材料名は危険です。steareth, sodium laureth sulfaat は特に注意した方がいいです。たとえばAscorbinezuur は化学物質っぽく聞こえますが、レモンにふつうに含まれる物質です。
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