「戦争の果汁」制作裏話 〜はだしのゲン、カネヒデ、ベルギー首相〜

石垣島の庶民のスーパー「カネヒデ」で2000円分の肉を購入し、異臭を放つまで腐らせる・・・そんな怪しいプロジェクトの全貌です。もちろん大マジメに仕事しているつもりですが、じぶんでも公表するのがちょっと恥ずかしいですね。怪しすぎて。

「戦争の匂い」展への参加要請は昨年末あたりからありました。名の知れた嗅覚アーティストが世界から集う展覧会なので、注目度も高いことは始めから予想されました。

戦争の匂いといったら、日本人として育った私にはやはり「はだしのゲン」のイメージなんですよね。丸焦げになった死体。夏の陽射しでそれが腐っていき、蠅がたかり、うじむしが湧いて・・・みたいな。

さすがに「うじむし」まではできないけど、その前あたりまではシミュレーションして、匂いを抽出できるのでは、と思いました。

3/27
2転3転しましたが、3月までには展示方法の最終決定。アクリルのヘルメットのようなものを「ヘッド・マウント・ディスプレイ」のようにしてかぶり、その中で匂いを嗅ぐという仕掛けをデザインしました。以前似たようなインターフェースを作っており、これが3つめのデザインです。部品を購入。慣れないオランダのホームセンターPRAXISで数時間、いっしょうけんめい細部をイメージしながら、部品を揃えました。(カトロルとよばれる滑車は、その文化が発達したオランダの方が品揃えがいいのです)



以前東急ハンズで購入していたアクリルボールを使います。口の部分がやや狭く、日本人ならいいんだけど西洋人の頭が入らない事が判明。オランダ中のアクリル会社にカッティングの問い合わせしましたがことごとく断られ、途方にくれましたが、けっきょく自分でノコひとつでやりました。けっこう大変で、泣きそうになりましたが・・・。女でも、やればできる。こうして私はどんどん逞しい女になっていくのですね(笑)「何でも自分でできる自立した女になるように」育ててくれた父親の賜物です・・・。


ここまでの作業は前回のヨーロッパツアーのときに終わらせ、ベルギーに発送。発送しおわったのは、なんとフライトの数時間前というスケジュールのタイトさ・・・ ^^;

さて。石垣に戻り、カネヒデという庶民のスーパーのお肉コーナーでいろいろ物色します。家族連れの買い物客がふつうにBBQのお肉を選んでいるなかで、「人間の腐った死体をシミュレーションするのに、何の肉がふさわしいかそんなこと考え込んでいる怪しいヒトです。

「やっぱり牛肉は避けた方が良いかな。バター臭い体臭てのもあるにはあるけど、たいてい西洋人のことをいうしね。大戦前の日本人はそもそも牛とか食べないし。牛は草食だし、ヒトは雑食。じゃあやっぱり豚かな。鶏とちがって、同じほ乳類だし。三枚肉の脂肪の層とか、ヒトの脂肪みたいに見えなくもない。やはり、鶏も入れようかな。ヒトも鶏も、雑食っていう点で共通してるし、鶏のササミなんてヒトの筋肉みたいだし・・・」

こうして鶏肉と豚肉を2000円分購入し、アトリエで作業開始。まずガスバーナーで肉を焼いてみる。4/14のことです。匂いを嗅ぎつけて、あたりから猫とかが寄ってきます。


チリチリチリ、と脂肪が焼けて泡立つ音。皮が反って、くるまっていく滑らかな動き。ヒトが焼けるときもこんなふうなのだろうか・・・と思うと、なんだか気分は暗くなっていきます。ビデオも撮ったんですが、リアルすぎて公開できません・・・


軒先の陽の当たるところに吊り下げます。もちろん蠅が入らないように、網に入れて。カラスと猫にやられない形式を考えついたのには、キャンプの経験が生きてます。原爆が落とされた季節は、真夏でしたね。石垣の陽射しはまだ夏といった感じではないですが、すでにけっこう強い。




3、4日経つと、だんだん生ゴミ臭さが出て来ます。

10日ほど経った4/24。ここまでくるともう、辺りに酸っぱい匂いが漂います。蠅もたかります。軒先に吊るすのが限界です。これ以上やると、近所からクレームがくるでしょう。

試しに少し抽出してみて、「焦げ臭」が足りない事がわかったので、さらに焦がしました。



これをさらにスライスします。この光景はもうまさに、ホラー映画。おそろしくて、写真も撮れませんでした。まな板が真っ黒になるくらい、蠅がたかります。。。いったいどこからやってくるのか。「鼻が曲がる」といった表現がピッタリなくらい、私の鼻も限界で、遠いところで息を思い切り吸って、まな板まで走って・・・を繰り返します。


抽出後、濾しますが、これまた辺りに異臭が漂う作業です。匂いで頭痛がするなんて、初めての経験でした。気分も落ち込みます。これ続けていたら、鬱になっていたと思います。


臭った肉の抽出液とビールが混在するわが家の冷蔵庫・・・・



4/25に石垣を出て東京に向かい、4/29朝に羽田を出て、その晩深夜過ぎにオランダに着き、ほとんど寝ずに早朝にベルギーまで電車。時差ぼけもあってフラフラになりながら展覧会場に着きます。

オーガナイザーが私が事前に指示した通りに設置しててくれた。素晴らしい。頭が下がる思いですね。


オープニング(お披露目レセプション)まであと数時間。ごはんも食べずに、匂いを仕掛けて、ボールをきれいに磨き上げます。


レセプションではたいへん好評でした。ベルギーのフラームス区の首相も、楽しそうに匂いを嗅いでいき、「おめでとう」と握手しにきてくれました。(翌朝ツイッターを空けると、私の作品体験中の作品が出回っている・・・笑 数多くの作品からコレを選んでくれてありがとう。)


このあとはバー・タイム。ベルギービールが飲み放題だったので、浴びるほど飲みました。展示仲間たちとも3月のドイツ以来の再会。いつもながらだけど、オタクの匂いトークで盛り上がりました。


会場は、デ・ロービング城というお城です。八重桜満開でした。ふだん海や山しかない文化の薫りのない田舎暮らしなので、じぶんの立つ舞台セットがごっそり入れ替えられたような感じがしました 笑。


The Smell of War exhibition:


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