煉香の試作 (1)

古く平安時代よりわれわれ日本人に親しまれている香に、薫物(たきもの)があります。粉末状の香料をコネコネ練って固めるという、いたってシンプルな方法で作られるお香です。「煉香」「印香」とも呼ばれます。作り方がシンプルな一方で、複数の香木や樹脂を使うので、多様で複雑な香色を創り出すことができます。

源氏物語には「薫物合わせ」という遊びさえ出現します。源氏のあまたの女性たちが調香の腕を競い合うのです。醜くなりがちな女性達の争いさえも、こうもエレガントな勝負に昇華させる当時の感性、まったく脱帽してしまいますね。

いつか老舗の京都鳩居堂さんで名香「荷葉」を香らせていただいたことがあります。爽やかでありながら濃厚な花の匂い。源氏物語に「懐かしくホッとする女性像」として登場する夏の御方、花散里の君のイメージとして千年来伝承されて来た香りです。

「薫集類抄」という12世紀頃に記された文献を参考にすると、あるていどはこれらの香りを再現することができそうです。この実験はまた今度の機会に譲るとしましょう。

今回の試作にあたっては、麻布香雅堂さんの「煉香手作りセット」を利用しました。レシピも説明書に載っている通り。私が文献を調べた所、「荷葉」などの古典的なレシピよりはかなり沈香の割合が少なめです。



まずは粉をそれぞれ計り、ほどよく混ぜて、



付属の蜜を混ぜます。



丸めるとまるで正露丸みたいです。大きさも正露丸ていどにしてみました。



これを古典的なレシピでは「半年ほど寝かして熟成させる」そうです。現代ではそんな悠長なことなかなかできませんよね。



というわけで待ちきれず、焚いたのは2日後。

最初に立ち上るのは清々しい竜脳の香り。私の脳はピピピっと、「龍角散」と反応しました。嗅覚と脳の反射関係を実感する瞬間です。

しばし置くと丁字や白檀の甘く扇情的な匂い、その後は深くまどろむような落ち葉の香りが残ります。たぶん沈香や薫陸などの樹脂成分のせいですね。

火加減が難しいです。火が均等にあたるように、薄いコイン状にした方が良かったかもしれません。

こんどは、実際に源氏物語に出て来る「荷葉」「梅花」などのレシピを試してみようと思ってます。夏に予定されているライデン美術館での展示のための実験です。またのご報告をお楽しみに。

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