バイラル・パフューム 〜もしもコロナウイルスが匂って見えるものだったら〜
ドイツ・ブレーメンで展示予定の作品です。
バイラル・パフューム
〜もしもコロナウイルスが匂って見えるものだったら〜
Maki Ueda
新型コロナウイルスの登場後、私たちは、ウイルスという目に見えないものを見ようとするようになった。空中に浮遊するウイルスを、換気によって外に流したり、飛沫が届かない位置で人と対面したり、マスクをつけて自己防衛したり、手に付着したかもしれないウイルスをこまめに洗い流したり。
このウイルスの広がり方は、香りの広がり方にも似ているなと思った。香りも、空気に乗って拡散するため、私はよく空気の対流や換気に気を遣っている。それに、強い香りを扱う時はマスクをしている。香料を扱うときは、他の瓶に香りが移ってしまうのを防ぐため、こまめに手袋を替えている。
香りとコロナウイルスに共通する点を挙げてみよう。
どちらも小さすぎて、目に見えない
空気を媒介として拡散する
付着により伝播していく
そして時間が経つと消えてしまう
今回の展示では、ウイルスを香りに喩えた。ビジターは、部屋の好きなところに、「ウイルス・パフューム」をスプレーしても良い。他のビジターは、香りを頼りに、ウイルスの付着している箇所を探り出す。ふつうの明かりの下ではウイルスは見えないが、時折、ブラックライトにより照らし出されるようになっている。
ウイルスの種類は、変異種を含め6つ用意した。それぞれタイプの異なる香りであり、香りが合わさった時、「白百合」の香りとなる。新型コロナウイルスによる死者を弔うための香りである。
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