グラースに行ってきました!
香水の街、南仏グラース。まさに10年ぶりでした。
グラースを10年前と比べると:
・観光化が進んだ。
・MIPがリニューアルオープンした。
・道路が整備された。ガタガタしなくなり、広くなった。カンヌへの高速ができた。
・グラース人が英語をしゃべるようになった。
・中心街のダウンタウン(スラム)っぽい雰囲気がなくなった(アフリカ・モロッコ系移民が街から消えた→市の努力?)
・地元民の小さな街角のバーが消えた(→地代が上がった?)
・街灯がオレンジ灯からLEDに変わり、中世の雰囲気が消えた。
・Fragonardがチェーン化した。(当時は1店舗しかなかった)
・MolinardもFragonardも調香体験のサービスを作った(当時はGalimardのみ)
・これらブランドの提供する体験の差別化がすすんだ。
・あちこちで畑が公開された。
10年前、グラースではローズもジャスミンもほとんど生産されていないとGIP(調香師学校)で教わりました。生産の拠点はすでにエジプトやインドに移り、いまグラースにあるのは化学工場と知識産業のみ、と。なので一面のお花畑を見学したいと生徒が要望すると、そんなものはもう存在しないとの返事でした。そこでオープンしたてのMIP(国際香水博物館)のガーデンに連れて行ってくれたのです。当時、一般向けの畑も、ツアーも、存在しませんでした。畑を公開していたのはおそらくそこだけだった。今考えると、グラースは、転換期だったのかもしれません。その翌年、MIPがリニューアルオープンし、観光地化が急速にすすんだと聞きます。
ガーデンに関しては、DiorがDomaine de Manonという荘園を使って、あるいはChanelがPegomasの荘園を使って、MIPの真似をしつつ、ステータスを高めようとしたとも考えられます。
学校で教わったもうひとつのこと。Rose du Mai や、Jasmin grandifolia など、グラースの土壌で品種改良された香水用の花は、他の産地のよりフランス産の方が品質が高いと、学生は教わります。ですが実際は、フランス産のローズもジャスミンも、市場にはまったく出回ってません。「自社畑所有の大きな会社が独占している」といった都市伝説も考えることができますが、単に高コストのためほとんど生産されていないのかもしれません。されていたとしても、実用のためではなく、単なるステータスのためのようですね。いずれにせよフランス産香料の希少価値を高める結果となり、やはりフランスにはかなわないんだなあと思いました。
とある友人のフランス人は、シャネル・ローズ生産者のファミリーの出身と聞いています。Domaine de Manon のような家柄かと想像されますが、現在は直接的な香料ビジネスを離れてしまったとのこと。グラースの生産者も生き残りが大変なのだと思います。
私自身も小さなアトリエを経営をしているのでとてもよくわかるのですが、付加価値を高めないと貧乏暇なし状態に陥ります。自分で石垣島の草花を抽出しているため、石垣産コスメを作る業者などがやってきて、それを売ってくれと頼まれます。ですが私は決して香料としては売りません。1滴のエッセンスに、どれだけの付加価値をつけることができるか、試しているからです。たとえば調香体験でのみ使用できるとしており、付加価値を高めています。
グラースも、もともとその素質があったとはいえ、市の施作もあって、10年前よりも体験を売ることに成功していると感じました。
そしてもうひとつ考察したのが「何のための匂い香りか?」という点。匂い香りは西洋ではざっくりいえば媚薬的に、そして日本では癒しに使われます。いわゆる効果効能ですね。でもそれは、脳の機能でいえばおそらく、快楽を司る部分しか使っていないのでは。そんな風に、チンパンジーやゴリラと同レベルでよいのか?という考えが浮かびました。やはりもっと抽象度の高い幸せを求めるべきではないか。そのための、共通言語としての匂い香りは可能なのか?
難しい話に聞こえますが、今回お土産として香りを買うのに苦労しました。誰かを香りで喜ばせたい、幸せにしたいと思った時、案外難しい。「これでいいのか?」と疑問に思いつつ、身近な人へ何かしら香りのお土産を買うチャレンジをしました。すでにひとり「絶対この人香水を嫌いそうだけど…」と思われる人に渡しました⇨喜んでました! 実は興味はあったけど、出会いがなかった模様。香りで自分を幸せにするのは簡単だけど、他人を幸せにするのは難しいし、勇気が要りますね! でもここにコミュニュケーションのkeyがあると思いました。昔の香遊びや、香道のような深いコンテキストには及ばないかもしれませんが。
グラースを10年前と比べると:
・観光化が進んだ。
・MIPがリニューアルオープンした。
・道路が整備された。ガタガタしなくなり、広くなった。カンヌへの高速ができた。
・グラース人が英語をしゃべるようになった。
・中心街のダウンタウン(スラム)っぽい雰囲気がなくなった(アフリカ・モロッコ系移民が街から消えた→市の努力?)
・地元民の小さな街角のバーが消えた(→地代が上がった?)
・街灯がオレンジ灯からLEDに変わり、中世の雰囲気が消えた。
・Fragonardがチェーン化した。(当時は1店舗しかなかった)
・MolinardもFragonardも調香体験のサービスを作った(当時はGalimardのみ)
・これらブランドの提供する体験の差別化がすすんだ。
・あちこちで畑が公開された。
10年前、グラースではローズもジャスミンもほとんど生産されていないとGIP(調香師学校)で教わりました。生産の拠点はすでにエジプトやインドに移り、いまグラースにあるのは化学工場と知識産業のみ、と。なので一面のお花畑を見学したいと生徒が要望すると、そんなものはもう存在しないとの返事でした。そこでオープンしたてのMIP(国際香水博物館)のガーデンに連れて行ってくれたのです。当時、一般向けの畑も、ツアーも、存在しませんでした。畑を公開していたのはおそらくそこだけだった。今考えると、グラースは、転換期だったのかもしれません。その翌年、MIPがリニューアルオープンし、観光地化が急速にすすんだと聞きます。
ガーデンに関しては、DiorがDomaine de Manonという荘園を使って、あるいはChanelがPegomasの荘園を使って、MIPの真似をしつつ、ステータスを高めようとしたとも考えられます。
学校で教わったもうひとつのこと。Rose du Mai や、Jasmin grandifolia など、グラースの土壌で品種改良された香水用の花は、他の産地のよりフランス産の方が品質が高いと、学生は教わります。ですが実際は、フランス産のローズもジャスミンも、市場にはまったく出回ってません。「自社畑所有の大きな会社が独占している」といった都市伝説も考えることができますが、単に高コストのためほとんど生産されていないのかもしれません。されていたとしても、実用のためではなく、単なるステータスのためのようですね。いずれにせよフランス産香料の希少価値を高める結果となり、やはりフランスにはかなわないんだなあと思いました。
とある友人のフランス人は、シャネル・ローズ生産者のファミリーの出身と聞いています。Domaine de Manon のような家柄かと想像されますが、現在は直接的な香料ビジネスを離れてしまったとのこと。グラースの生産者も生き残りが大変なのだと思います。
私自身も小さなアトリエを経営をしているのでとてもよくわかるのですが、付加価値を高めないと貧乏暇なし状態に陥ります。自分で石垣島の草花を抽出しているため、石垣産コスメを作る業者などがやってきて、それを売ってくれと頼まれます。ですが私は決して香料としては売りません。1滴のエッセンスに、どれだけの付加価値をつけることができるか、試しているからです。たとえば調香体験でのみ使用できるとしており、付加価値を高めています。
グラースも、もともとその素質があったとはいえ、市の施作もあって、10年前よりも体験を売ることに成功していると感じました。
そしてもうひとつ考察したのが「何のための匂い香りか?」という点。匂い香りは西洋ではざっくりいえば媚薬的に、そして日本では癒しに使われます。いわゆる効果効能ですね。でもそれは、脳の機能でいえばおそらく、快楽を司る部分しか使っていないのでは。そんな風に、チンパンジーやゴリラと同レベルでよいのか?という考えが浮かびました。やはりもっと抽象度の高い幸せを求めるべきではないか。そのための、共通言語としての匂い香りは可能なのか?
難しい話に聞こえますが、今回お土産として香りを買うのに苦労しました。誰かを香りで喜ばせたい、幸せにしたいと思った時、案外難しい。「これでいいのか?」と疑問に思いつつ、身近な人へ何かしら香りのお土産を買うチャレンジをしました。すでにひとり「絶対この人香水を嫌いそうだけど…」と思われる人に渡しました⇨喜んでました! 実は興味はあったけど、出会いがなかった模様。香りで自分を幸せにするのは簡単だけど、他人を幸せにするのは難しいし、勇気が要りますね! でもここにコミュニュケーションのkeyがあると思いました。昔の香遊びや、香道のような深いコンテキストには及ばないかもしれませんが。
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