御蔵島の森の香りを抽出

御蔵島は東京の南約200kmに位置する、小さな島です。

島一周すべて断崖絶壁というユニークな地形。
そのため雨が降りやすく、つねに森が潤っています。
ちょっと屋久島に似ていますね。

週末を使って「御蔵島・五感の旅ツアー」に参加してきました。
ちなみに野生のイルカと泳げることで有名な島ですので、ドルフィン・スイムつき。




この島の海辺はどこもかしこも外洋に面してる断崖絶壁。
穏やかな磯や砂浜が全くありません。
そのためか、こんなに海が目の前にあっても、潮の香りさえしないのです。

じつは、潮の香りとは、海藻や魚などの死骸や、人間の生む排水が養分となって活性化する、プランクトンの匂いです。いわゆる腐敗臭ですね。

この海の生態系も豊かだとは思われますが、
荒い波がそれをきれいに洗っていくので、
常に海辺がリセットされるのでしょう。

それは山についても同じことがいえます。
木の葉や動物の死骸の腐敗が、いわゆる「森の香り」の重要な要素だったりするのですが、
常に雨が地を洗い流しているからか、
条件としては発酵や腐敗に十分の気温や湿度が揃っているにもかかわらず、
熱帯雨林的なムンムンした感じではありません。

というわけで、匂いの研究には非常にハードルの高い場所でした。
しかも風・雨という悪条件。
本来そこにあるはずの匂いも、風が容赦なくさらっていきます。

ですので探索した森でも、漂う空気に嗅覚を任せるというよりは、
「ここにはきっと香りがあるのではないだろうか」的な冷静な目での判断をしながら、
抽出できそうな素材を採集しました。
本来は数倍時間をかけるところ、集団行動だったので、カンを使ってささっと手短に。
生きている森ですので、遠慮がちに、なるべく落ちているものを拾う感じで。



入り口にはサクユリが咲き乱れています。
花屋のカサブランカの香りより、清らか。


この日の森は、雨上がりだったこともあり、質量が重いような、湿った香り。
土の黴がツンと鼻につきます。



↑木の根が腐敗して土へと還るその途中

↑広葉樹も針葉樹も、竹も笹も混在する、なんでもありの森でした。
ここは杉林、ちょっと進むと竹薮、そのさらに奥は鬱蒼としたトトロの森・・・といった感じに、景観がダイナミックに展開します。
この多様性、かなり珍しいのではないでしょうか。

↑この植物をたくさん見かけました。↑ガイドさん、これなんでしょう。「ニオイエビネ」?
まだ開花してないですが、きっと良い芳香を漂わせるのではないでしょうか。

↓魔女、仕事中につき、危険。近づかないでください。



本日の収穫:
・サクユリ
・腐りかけの大樹の木の根
・木の根が腐りきって、土になりかけているもの
・落ち葉
・笹
・杉の葉
・杉の木の皮
・ドクダミ
・あしたば
・ハチジョウエビネ


その他、今回は採集を見送ったもの、

・ヨモギ(採るの忘れた)
・ハチジョウアザミ(十分な量が無かった)
・道ばたの黄色い花
・道ばたの街路樹


↑今回は準キャンプにて、抽出キットは軽装備につとめました。
乳鉢代わりに、そのあたりに落ちている石を使うとかね。(笑)
しかし強風のため、粉砕の作業が思うようにできず、苦労しました・・・。

現在まだ抽出プロセスの途中ですが、順調です。
できあがったらまたご報告しますね。

もともとは香りを抽出する計画はあまりなかったのですが、
ガイドさんから事前に御蔵島の森の話を聞き、
なんとなくその熱意に動かされたんですね。
こんな方法でうまくいくのだろうかとちょっと疑問でしたが、
なんとかなるもんですね〜!
大きな収穫です。


ついでにもう少し、匂いとは関係ありませんが、森の写真を。


↑葉っぱ何枚つけてますか? 答え:14枚。 


↑屋久島のように、木にいろんな植物が寄生し、もちつもたれつの関係を保っている、寛容な森でした。


↑御蔵島の夕暮れ。


↑ついでですが、御蔵島へ渡る途中、三宅島に寄りました。まだ火山活動が活発なため、辺りに硫黄の匂いが立ちこめています。そんな中、緑がたくましい・・・。三宅島から御蔵島へのストーリーは長くなるし、思い出しただけでも脂汗が出て来そうなので、また別の機会に(笑)

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