「香りの仕事がやりたい」という方へ


最近よく聞かれるようになったのが、「香りの仕事をやりたいんですが、どんな勉強をしたらいいですか」という相談です。アロマテラピー検定などが普及した影響なのか、資格が取れれば何かしらの仕事に就けるのではと考えるのも無理ない話。


でも私はつい、相談に来られる方に、逆に質問してしまいます。「香りの仕事って、どんな仕事ですか?」と。どんな仕事を「香りの仕事」とイメージしているのか、むしろ教えて欲しいのです。みなさんの身近なところでは、いらっしゃいますか、そのような仕事をしていらっしゃる方。


香りは、専門的には化学や薬学の領域です。いわゆる香料会社に就職してパフューマー(調香師)やフレーバリストという職業についている人なんて、ほんとうにいなくて、私の広い知人関係でも数えるほどしかいません(特に日本では)。化学や薬学の新卒であっても、採用される人はほんのわずか。なので、アナリストや機械技師、営業やマーケッターなどのポジションを狙って就職活動するのがせいぜいです。


でも私のところに相談に来る人は、そこまでガチではないようです(笑)バイトや契約社員的にでできる範囲ですよね。


たとえばアロマテラピーの内容を見ると、「有効成分」の勉強をするので、あたかも手軽に症状緩和のアドバイスができるかのような気になってしまいますが、どうでしょうか。基本的にはお医者さんの領域のように思われます。おそらく看護師の資格を持っている方でも、微妙でしょう。あくまで「セルフケア」の範囲を越えられないはずです。なので、アドバイスするお仕事というのも、資格的にいって存在しないはず。目の前の人や身近な人に親身になってアドバイスする、というのはアリだと思いますが、それをビジネスとして成り立たせるのは事実上不可能です。そのためアロマテラピーは、お弟子さんを取って教えるという「家元ビジネス」になりがちです。


けれどもせっかく香りの勉強をしたのなら、生かしたいですよね。あるいは、なんらかの着地点を持って、学びたいですよね。手近なところでは、以下の仕事が考えられます。


・アロマセラピストとしてマッサージ屋さんで働く(石垣島のようなリゾート地には一定の求人もある)

・花屋さんで働く(いつも香りに囲まれていられます)

・デパートのパフューム売場や化粧品売り場の売り子さんになる(求人は少ないけど)

・ちょっと専門的な飲食店で働く(コーヒーやカクテルなどを通して香りを追求できる、など)


しかし私がお勧めするのは、転職などせずに、今の仕事を続けながら、「自分の中で仕事と香りと両立させること」です。


1:香りの勉強をしていることを周りに伝え続けていれば、運良く職場で「この空間に合うアロマ作ってよ」「この商品と香りのコラボ商品を考えてよ」などと頼まれるかもしれません。


2:職場で培っている技術を強みにすることができたら、例えばジュエリー系の仕事だったら、副業的に「香るジュエリー」などを作って、週末のフェスで小さな商品を売ったりイベントをやったり、という手もあるかもしれません。


3:職場と全く切り離し、本業のおかげで香りの勉強、あるいは副業ができる(金銭的にも、時間的にも)と割りきることもできるかもしれません。^_^


このように、「自己実現」「自己表現」あるいは「生活を豊かに彩るツール」として、香りと関わるのはいかがでしょうか。香りは、生活の至る所にあふれています。なので、それを仕事としなくても、香りを中心に生きていくことはできます。どんなに好きなものであっても、本業にすると案外ルーティンワークになってしまい、つまらなく感じたりするものです。その点、趣味あるいは副業としておいた方が、自由度が高く、長期的な満足感や幸福感を得られるかもしれません。


私がアーティストとしてお手伝いできるのは、みなさんのこうした自己実現です。私の主宰する香りの通信教育では、毎月個別あるいはグループでお話しする機会を設け、この「着地点」をガイドさせていただいてます。その形は一様ではなく、十人十色なのです。

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